会社を設立するときに作る「定款」。紙で作ると収入印紙代4万円がかかりますが、PDFで作る「電子定款」にすればこの4万円が不要になります。
この記事では、電子定款を自分で作るために必要なものと、作成から公証人の認証、受け取りまでの手順をステップごとに解説します。会社設立の全体の流れや、定款の文例・設立登記の書類については株式会社・合同会社の設立方法を図解で解説をあわせてご覧ください。
・電子定款なら収入印紙4万円が不要
・必要なのは「マイナンバーカード」「ICカードリーダー」「Adobe Acrobat+PDF署名プラグイン」「申請用総合ソフト」
・株式会社は公証人の認証が必要、合同会社は認証不要
・署名後は修正できないので、公証人の事前確認を先に済ませる
※2026年10月時点の情報です。ソフトの対応環境や手順は変わることがあるため、登記・供託オンライン申請システムや公証役場の最新の案内をご確認ください。
電子定款とは
電子定款とは、PDFファイルで作成し、電子署名を付けた定款のことです。紙の定款は印紙税の対象ですが、電子定款は印紙税がかからないため、4万円を節約できます。
| 項目 | 紙の定款 | 電子定款 |
|---|---|---|
| 形式 | 紙に印刷して押印 | PDFに電子署名 |
| 収入印紙 | 4万円 | 不要 |
| 公証人の認証(株式会社) | 公証役場で認証 | オンラインで申請し、対面またはテレビ電話で認証 |
| 準備するもの | 実印・印鑑証明書など | マイナンバーカード・ICカードリーダー・ソフトなど |
電子定款の作成に必要なもの
マイナンバーカードの「署名用電子証明書」の暗証番号は、6〜16桁の英数字です。5回続けて間違えるとロックされ、市区町村の窓口で再設定が必要になります。引越しなどで住所が変わると電子証明書が失効するため、有効期限とあわせて確認しておきましょう。
電子定款の作成から認証までの流れ(図解)
株式会社の場合
作成日は空欄にしておく
メール等で原案を送り、内容をチェックしてもらう
Wordの「PDFとして保存」などで変換
Adobe Acrobat+PDF署名プラグインで署名
署名済みのPDFを添付して送信
手数料を納め、対面またはテレビ電話で手続き
認証済みのデータをダウンロードまたはCD-R等で受領
合同会社の場合
署名した時点で電子定款が完成
オンライン申請で添付するか、CD-R等に保存して提出
ステップ1:定款を作成する
まずはWordなどで定款の原案を作ります。商号・目的・本店所在地・資本金などの基本事項を盛り込みましょう。定款の書き方は設立方法の記事にある定款の文例を参考にしてください。
- 作成日(「令和〇年〇月〇日」)は空欄にしておき、署名の直前に入れる
- 発起人(合同会社は社員)の氏名・住所は、マイナンバーカードの記載と一致させる
- 株式会社の場合は、本店所在地を管轄する公証役場に原案を送り、事前確認をしてもらう
株式会社の定款認証では、会社の実質的支配者(議決権の過半数を持つ人など)が暴力団員等に該当しないことを申告する書類の提出が求められます。事前確認の際に、公証役場へあわせて提出しましょう。
ステップ2:PDFに変換する
公証人の確認が済んだら、作成日を入れてPDFに変換します。Wordなら「名前を付けて保存」で「PDF」を選ぶだけで変換できます。この時点で誤字・脱字がないか、最終確認をしておきましょう。
ステップ3:マイナンバーカードで電子署名する
PDFに電子署名を付けます。一般的には、Adobe Acrobatに法務省の「PDF署名プラグイン」を組み込み、マイナンバーカードで署名します。
- PDF署名プラグインをダウンロードしてインストールする
- ICカードリーダーをパソコンに接続し、マイナンバーカードをセットする
- Adobe Acrobatで定款PDFを開き、署名機能からPDF署名プラグイン(SignedPDF)を選ぶ
- 発起人の氏名の横あたりに署名欄を作る
- 署名用電子証明書の暗証番号を入力して署名し、保存する
署名後にPDFの内容を変更すると、署名が無効になります。修正が必要になったら、修正したPDFにあらためて署名します。発起人が複数いる場合は、全員が順番に署名します。
また、Acrobatのバージョンや32bit/64bitの違いでプラグインが動かないことがあります。対応環境は法務省の案内で確認してください。
ステップ4:申請用総合ソフトで認証を申請する(株式会社のみ)
株式会社の場合は、法務省の「申請用総合ソフト」を使って、公証人に定款の認証を申請(嘱託)します。
- 申請用総合ソフトをインストールし、申請者情報を登録する
- 手続の一覧から、公証人への定款認証の嘱託(電子公証)を選ぶ
- 宛先の公証役場、申請内容を入力する
- 署名済みの定款PDFを添付し、送信する
ステップ5:公証人の認証を受ける(株式会社のみ)
送信後、公証役場から連絡が来たら、日程を調整して認証を受けます。公証役場に出向くほか、テレビ電話(Web会議)での認証も可能です。認証手数料は、定款に記載した資本金の額などに応じて1万5千円〜5万円です(詳しくは設立方法の記事の費用の表をご覧ください)。
ステップ6:電子定款を受け取る
認証が終わると、公証人の電子署名が付いた電子定款を受け取れます。受け取り方法は、システムからのダウンロード、またはCD-RやUSBメモリへの保存などです。法務局への設立登記の申請で使うため、必ずバックアップを取っておきましょう。
設立登記で必要になる「同一の情報の提供」は1通700円、紙で交付を受ける場合はページ数に応じた加算があります。
電子定款と紙の定款、費用はどちらが安い?
| 費用 | 紙の定款 | 電子定款(自分で作成) |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 4万円 | 0円 |
| ICカードリーダー | ― | 2,000〜4,000円程度 |
| Adobe Acrobat | ― | 有料(月額プランなど) |
| 手間 | 少ない | ソフトの準備・設定が必要 |
パソコンの操作に慣れていれば、電子定款のほうが費用を抑えられます。ソフトの設定が難しいと感じる場合は、電子定款に対応した会社設立サービスや、行政書士・司法書士への依頼も選択肢です。
よくあるつまずきポイント
- 署名用電子証明書の期限切れ・失効…引越し後は失効しているので、市区町村で再発行
- 暗証番号を忘れた…5回間違えるとロック。窓口で再設定
- プラグインが表示されない…Acrobatのバージョンや32bit/64bitの違いを確認
- Macしかない…ソフトがWindows向けのため、Windowsパソコンを用意するか、外部サービスを利用
- 署名後に修正点が見つかった…修正版に署名し直す(事前確認を先に済ませるのがコツ)
電子定款ができたら、設立登記の準備へ
電子定款が完成したら、次は資本金の払込みと法務局への設立登記の申請です。設立登記申請書の書き方や添付書類の一覧は、株式会社・合同会社の設立方法を図解で解説で詳しくまとめています。
会社が設立できたら、取引先へのあいさつに名刺も必要になります。プリスタ®のテンプレート名刺なら100枚500円(税別)から作れます。
よくある質問
Q. 電子定款は自分で作れますか?
作れます。マイナンバーカード(署名用電子証明書)、ICカードリーダー、Adobe Acrobat、法務省のPDF署名プラグイン、申請用総合ソフト(株式会社の場合)を用意すれば、専門家に頼まずに作成できます。
Q. 電子定款にすると、いくら安くなりますか?
紙の定款に必要な収入印紙4万円が不要になります。ICカードリーダーやPDFソフトの費用はかかりますが、多くの場合は電子定款のほうが安く済みます。
Q. 合同会社でも電子定款は使えますか?
使えます。合同会社は公証人の認証が不要なので、電子署名をしたPDFがそのまま定款になり、設立登記の申請に添付します。
Q. Macでも電子定款は作れますか?
法務省の申請用総合ソフトやPDF署名プラグインはWindows向けのため、基本的にはWindowsパソコンが必要です。Macしかない場合は、会社設立サービスや専門家への依頼も検討しましょう。
Q. 電子署名のあとで定款を修正したくなったら?
署名後にファイルを修正すると署名が無効になります。修正したPDFにあらためて署名し直す必要があるため、署名の前に公証人の事前確認を済ませておくのが安心です。
まとめ
電子定款は、必要なものをそろえれば自分でも作成でき、収入印紙4万円を節約できます。「定款作成 → PDF化 → 電子署名 →(株式会社は)認証申請・認証 → 受け取り」の順に進めましょう。署名後は修正できないため、事前確認を先に済ませることが成功のコツです。
